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2022/08/02

岩本晶子さんのライナーノーツ(そのわけは旭川〜あさひがわ〜)

岩本晶子さんのライナーノーツ(そのわけは旭川)

かつて洋楽レコードには必ずと言っていいほどライナーノーツと呼ばれる解説文が封入されていました。レコードに針をおとす前に読む人、何度も聴いてからあらためて読む人、人それぞれの読み方がありましたが、いずれにしても楽曲の想いをさらに深める『想像の旅』を、このライナーノーツが担っておりました。

水田竜子は、2018年発表の『礼文水道』よりオフィシャルサイトにてライナーノーツ掲載をはじめました。執筆いただいているのは岩本晶子さん。かつて音楽誌のライターを担当し、現在は次世代のライターを育てる専門学校で教壇に立っておられます。

楽曲とは関係ないプライベートを掘り下げるインタビューが乱立している中、氏のインタビューは楽曲に対する探究心と新たな発見、そして何より歌い手の的確な分析と愛情が溢れておりました。

今回も執筆を依頼させていただきました。その際お渡しした資料は、いつも通り、詩と楽曲音源のみです。余計な情報はいっさいお渡ししない中で創り上げてくださったライナーノーツです。

読み方は人それぞれです。お聴きになってから、、、 お聴きになる前に、、、あるいはジャケット写真を眺めながら、、、人それぞれです。それがライナーノーツです。どうぞ歌の旅をお楽しみください。

 

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ときに生きる上での原動力であり、知りたいときもあれば、聞いてほしいときもある“そのわけ”。
これを持たずに、抱えずに生きてきた人などいない。

新曲『そのわけは旭川(あさひがわ)』の主人公が「そのわけは」と歌い語るたびに、自分の中にある“そのわけ”がいくつもいくつも浮かんでくる。
ずっと忘れていたものもあれば、つねに追い求めているものもあり、歌を聴きながらいつしか“そのわけ”と向き合っている自身に気が付く。

言うまでもなく歌は“聴く”ものであるが、どうやら『そのわけは旭川(あさひがわ)』は、感じるものであるようだ、と思い直す。

それもそのはず。

岡山の“旭川(あさひがわ)”を目にして、心の中にある故郷・旭川(あさひかわ)への郷愁を募らせる──歌の中に綴られているこのワンシーンは、水田竜子が20年前に岡山城へ足を運んだ際の実体験エピソードであり、作り込まれたフィクションではないからだ。

この歌と水田竜子の結びつきは、まさに劇的。
「運命」という言葉がちっぽけに思えるほどに。

『そのわけは旭川(あさひがわ)』は、“水田竜子”という歌手が存在しなければ生まれ得なかった歌であり、水田竜子にしかめぐり逢うことが叶わなかった無二の歌なのだ。

旭川(あさひがわ)と旭川(あさひかわ)に込められた共鳴するかのような声を、その想いとともに描かれている“あの人”との幸せを、この歌ばかりは目を閉じて、心で感じていただきたい。

あなたの中にある、そしてあなたの中にしかない「そのわけは」と重ねながら。


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©akiko iwamoto

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